イロイロな動物にみられる交替性転向反応という習性をご存じでしょうか?
この交替性転向反応は特にダンゴムシなどに強くみられる習性で、アリ・ゴキブリ・ミミズなど様々な生き物にみられる習性のようです。
交替性転向反応とは、連続してT字路があり、連続して右か左に曲がるという選択を繰り返す場合、例えば最初のT字路を右に曲がった場合、次のT字路では左に曲がり、その次はT字路では右に曲がるように、右と左の選択を交互に行うという習性のことです。
以下の画像を参考にしてもらうとわかりやすいかと思います。
先程も申し上げましたが、この交替性転向反応は、数多くの動物で見られる習性ですが、ダンゴムシに関しては特に強くこの習性が見られるそうです。
この記事では、ダンゴムシの交替性転向反応が本当に起こるのか?また、起こる場合、どの程度の確率で起こるのかを検証するために、実際に迷路を作成してダンゴムシに進ませてみて検証してみた結果をシェアしたいと思います。
この交替性転向反応の検証を動画でご覧になる場合は以下の動画をご覧ください。
そもそも、なぜ交替性転向反応は起こるのか?
動物の交替性転向反応はなぜ起こるのでしょうか?
その理由は、BALM仮説により以下のように説明されています。
動物が、連続する分岐点を左右交互に曲がりながら進んでいく交替性転向反応を示すのは、左右の脚にかかる負荷を均等にするためであるとする仮説。
goo辞書より引用
わかりやすく言うと、「右脚ばかり使うと疲れるから、左脚も同じくらい使おう!」といった感じでしょうか?
BALM仮説以外でも、交替性転向反応が起こる理由には以下のようなものがあると言われています。
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ひとつひとつ見ていきましょう。
外敵から身を守るため
交替性転向反応が起こらない場合、例えば極端な例になりますが、右にばかり曲がっていると、極めて限定された範囲でのみ行動することになるので、外敵から狙われやすいと考えられます。
交替性転向反応が起こることによって、敵からより遠くに逃げることができ自己防衛につながると考えられています。
効率よく餌を捕食するため
この理由についても、前項同様で交替性転向反応が起こらないと行動範囲が限定されてしまいます。
行動範囲が狭いとそのエリアにあるえさの量にも限りがありダンゴムシにとって、効率よく餌を捕食することが困難になり、生存の危機に陥ってしまいます。
交替性転向反応が起こることにより、広いエリアで餌の捕食が可能になるのです。
子孫繁栄のため(異性と出会い交尾をする)
ダンゴムシも異性と交尾をして子孫を残します。
交替性転向反応が起こり、行動範囲が広がることで異性との出会いも増えると考えられます。
ダンゴムシが通る迷路を作成
それでは実験で使う迷路を作成しましょう。
迷路を作る素材は、何でもいいのですが、ダンゴムシが側壁を登れないようにしないと実験が効率的に進まないので今回は比較的手軽に手に入れることができる以下の材料で作成します。
ご自身でも実験を行いたい方は迷路を作成してみてください。
出来上がった迷路は、この後、ご紹介します。
ダンゴムシの交替性転向反応の迷路実験の内容
迷路のSTART地点から1匹ずつ迷路を進ませてみる。
迷路は、あらかじめ交替性転向反応が起こればGOALにたどり着けるレイアウトにしておき、GOALにたどり着いたダンゴムシの割合を集計し交替性転向反応がどのくらいの確率で起こるのかを検証する。
迷路は初級・中級・上級の3種類つくり、それぞれダンゴムシを進ませてみて、交替性転向反応がどのくらいの確率で起こるのかを検証していく。
初級迷路での交替性転向反応の実験
初級迷路は以下のようなレイアウトになっています。
実験内容は、スタート地点にダンゴムシをおいて、迷路を進ませる。
最初は、強制的に右に曲がるようなレイアウトになっているので、最初の右折後に交替性転向反応が起こればGOALにたどり着くことができる簡単な実験です。
ちなみに初級迷路では10匹のダンゴムシに参加してもらい交替性転向反応の検証を行います。
【初球迷路での検証結果】 10匹中7匹のダンゴムシが見事ゴールにたどり着いた!
初級迷路は上記の迷路画像をご覧いただけばお分かりいただけると思いますが、5回の左右選択を成功させないとゴールできないようにレイアウトしてあります。
50匹のダンゴムシの中からランダムに10匹のダンゴムシを選んで初級迷路に挑戦させた結果、7匹のダンゴムシが見事ゴールにたどり着くことができました。成功率は70%でした。
単純にすごいと思います。
中級迷路での交替性転向反応の実験
中級迷路は以下のようなレイアウトになっています。
一見、「初級と変わらないんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思いますが、この迷路での実験の目的は、「T字路の後に、長めの直線があっても交替性転向反応は起こるのか?」という疑問に関する実験です。
初級迷路では、次々とT字路があるので、「さっきは右に曲がったから、次は左に曲がろう!」となっているかもしれない。中級迷路では最初のT字路で右に曲がったあと、初級迷路に比べ、長めの直線があるため、次のT字路まで時間がかかる。
そんな状況でも、交替性転向反応は果たして起こるのだろうか?という点についいて検証していきます。
【中級迷路での検証結果】 10匹中4匹のダンゴムシがゴールにたどり着いた。結果に明らかな変化が起こった!
中級迷路にも、初球迷路同様に10匹のダンゴムシを選び挑戦させた結果、10匹中4匹のダンゴムシがゴールにたどり着いた。成功率40.0%でした。
初級迷路より、左右選択が少ないにもかかわらず成功率が大幅に下がる結果となった。
根拠はないが、T字路とT字路をつなぐ直線を長く設定したことが明らかに影響していると思われる結果となった。
連続するT字路のほうが交替性転向反応は出やすいようだ!
上級迷路での交替性転向反応の実験
上級迷路は以下のようなレイアウトになっています。
ご覧いただいて、お分かりいただけると思いますが、この迷路は初級・中級に比べ、難易度を格段に上げています。合計7回の左右選択を成功させないとゴールにたどり着けない難易度の高い迷路だ!
ダンゴムシが持っている驚きの習性である交替性転向反応が、どこまで通用するのかをこの迷路で検証していきます。
【上級迷路での検証結果 】50匹中21匹のダンゴムシがこの険しい迷路を攻略しゴールにたどり着いた!
上級迷路ではあらかじめ準備しておいた50匹のダンゴムシすべてに挑戦させた結果、21匹のダンゴムシがこの項難易度の迷路を攻略しゴールまでたどり着いた。成功率は42.0%という結果となった。
結果として、ゴールにたどり着いたダンゴムシは21匹だったが、あと一歩でゴールにたどり着けたというダンゴムシも数匹いたことを考えると単に成功率42.0%という結果以上の成果だったのではないだろうか?
成功率42.0%を高いと思うか低いと思うかは、人それぞれだが、この項難易度の迷路を21匹ものダンゴムシがゴールまでたどり着いたことは単純にすごいと感じた。
ダンゴムシ 交替性転向反応の検証を終えて
今回の検証の結果、以下の通りになりました。
成功 | 失敗 | 成功率 | |
初級迷路 | 7匹 | 3匹 | 70.0% |
中級迷路 | 4匹 | 6匹 | 40.0% |
上級迷路 | 21匹 | 29匹 | 42.0% |
今回はダンゴムシにみられる習性、交替性転向反応を3つの自作迷路で検証しましたが、ひとこと「ダンゴムシ凄い!」と感じた。
特に、上級迷路では超高難易度の迷路であるにもかかわらず21匹のダンゴムシが見事ゴールにたどり着いた。
成功率だけをみると42.0%と、それほど高くはないが半数近くのダンゴムシがこの迷路を攻略したことは、まぎれもなく交替性転向反応という習性の力だと思われる。
今回の交替性転向反応の検証での反省
一方で今回自作した迷路の色が白だったことが、ダンゴムシの習性に悪影響を及ぼしてしまったのではないか?とも感じた。
あくまで推測だが、自作する迷路の素材をもっと自然の色(土や木の色)にすることで交替性転向反応はもっと強くみられたのではないだろうか?
この件については、次回、迷路を違った素材・色でつくり再検証していきたい。
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