クワガタムシ、通称「クワガタ」は、カブトムシと並んでもっとも人気・迫力のある昆虫の一つです。日本には約40種のクワガタがいますが、沖縄や奄美大島などの離島にしかいない種も多く、日本の広い範囲で一般的に見られるのは20種程度です。
この記事では、まず記事冒頭でクワガタについて簡単にご説明した後に、日本に生息しているクワガタの仲間を37種類、その特徴や生息地などについてご紹介していきます。
クワガタの特徴といえばオスだけにある最強の武器「大あご」
「クワガタムシ」の名前の由来は、頭にある大きなハサミのような形の「大あご」が、日本の戦国時代の武士が戦いのときにかぶっていたかぶとの、「鍬形(くわがた)」とよばれる二本の角のようなかざりに似ているからです。
この大あごは、多くの昆虫がえものを食べるために使うあごが大きく発達したもので、開いたり閉じたりして動かすことができます。また、大あごの内側には「内歯」とよばれる突起がいくつかついていて、内歯の数は種によってちがいます。
大あごが大きく発達しているのはオスだけで、メスはオスよりずっと小さく、武器としては使えません。種によっては、オスでも大あごが小さいものもいます。
まさに強そうな見た目のクワガタですが、実際にけんかに強く、えさとなる樹液の取り合いではカナブンやオオムラサキを蹴散らしていることもよくあります。
クワガタよりも体が大きく、重たいカブトムシとけんかをすることもあり、どちらかというとカブトムシが有利なようですが、クワガタが勝つこともあります。
また、メスをめぐってオス同士がはげしく戦うこともあります。けんかのときには、大あごで相手の体をはさみ、つかんで投げ飛ばします。
カブトムシと違い、クワガタの体は平たいのが特徴
クワガタはカブトムシと同じ「甲虫」の仲間で、体が黒っぽく、まるでよろいのように固いのが特徴です。カブトムシとちがうのは、クワガタの体がとても平たいことです。
これにより、木の皮のすき間や割れ目、たおれた木の下などに入り込みやすくなっています。ケンカのときも、平たい体で相手の体の下に潜り込むようにして戦います。
クワガタの見た目は攻撃的でこわいけど食べるのは樹液だけ
その攻撃的な見た目から、こわそうに見えるクワガタですが、多くのクワガタは肉食の昆虫ではありません。それどころか、草とか木の実を食べるわけでもなく、成虫の食べものは木からにじみ出る「樹液」だけです。
そのためクワガタの口は、食べものを切り裂いたり噛んだりすることはできず、樹液をなめとるためにブラシのような形をしています。例外として、チビクワガタなどの一部の種は肉食で、共食いをすることもあります。
幼虫は「朽ち木」を食べ、その中で過ごす
クワガタの幼虫は、成虫とは似ても似つかない白っぽいイモムシです。クワガタは「完全変態」とよばれる成長の仕方をする昆虫で、イモムシ型の幼虫が蛹(さなぎ)になり、羽化すると幼虫とはまったくちがう姿の成虫になるのです。
幼虫は「朽ち木」の中にすみます。朽ち木というのは、たおれたり、寿命が尽きて枯れたりした木が、菌類などによって分解されてぼろぼろになったものです。
クワガタの親は、生きている木と比べてやわらかくなった朽ち木の中に卵を産みつけます。孵化した幼虫はがんじょうなあごで朽ち木をかみくだきながら、朽ち木の中を掘り進み、そこで成長します。
幼虫のときにたくさんえさを食べられたかどうかで、成虫になったときのクワガタの体の大きさが決まります。幼虫は2回脱皮して大きくなり、その後、蛹になります。
蛹の間はほとんど動かず、数週間で羽化して成虫になります。羽化したのが春か夏なら、成虫はすぐに朽ち木の外に出て活動します。羽化したのが秋や冬だった場合は、そのまま朽ち木の中で冬を越し、春になると外に出て活動します。
クワガタはカブトムシに比べ寿命が長い
カブトムシは、成虫になると2ヶ月ほどで死んでしまいます。夏に捕まえて育てると、冬を越えることはできないのです。
クワガタも同じように短命だと思われがちですが、カブトムシと同じく2ヶ月ほどで死んでしまうミヤマクワガタを除くと、比較的長生きします。
オオクワガタなどは成虫になってから3年ほど生きることもあり、産んだ卵が成虫になるまで生きていることも少なくありません。成虫で飼ったクワガタが産卵して、そのこどもが成長したら、「親子対面」もありえるんですね。
クワガタは樹液や明かりに集まる
クワガタを採集したいと思ったら、まずは樹液の出る木を探すことが大切です。
杉や松などの針葉樹は樹液が出ないので、広葉樹がふくまれる雑木林を探します。特にどんぐりができるクヌギやコナラ、ブナなどによく集まります。
水辺に多いヤナギにも来ます。クワガタの多くは夜行性なので、昼間に樹液の出る木を探しておいて、夜や朝早くに探しに行くのがおすすめです。
また、夜行性のクワガタは光に集まる習性があり、雑木林などの近くにある街灯や、コンビニエンスストアなどに飛んできていることもよくあります。
日本に生息しているクワガタの仲間 37種類の紹介
それでは、前置きが長くなりましたが日本に生息しているクワガタの仲間を37種類ご紹介していきます。
この記事で、ご紹介するのは以下のクワガタたちです。
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ノコギリクワガタ 水牛のような大顎が特徴の子供たちに大人気のクワガタ
ノコギリクワガタの体長はオスは24〜77mm、メスは19〜42mmの大型のクワガタです。牛の角のように、大きく下向きに曲がった大あごが特徴のかっこいいクワガタで地域によっては「すいぎゅう」と呼ばれたりもしています。
大あごは真上から見ても非常に特徴的な形をしていて、ちょうど真ん中あたりで90度近く内側に曲がっていて、曲がったところより前の部分には名前のとおり、のこぎりのようにギザギザの内歯(大あごの内側にある突起)がいくつもあります。
ただしこれらの特徴は大型のオスだけで、小型のオスの大あごは比較的まっすぐで、先端で少し内側に曲がるくらいです。内歯は大あご全体に細かくあります。
メスの大あごは小さく、他のクワガタのメスと比べてもあまり違いがありません。クワガタの中では、体の色が赤っぽいのが特徴です。
ちなみに、「ノコギリクワガタ」と呼ばれているのは、ここでご紹介している本土産のノコギリクワガタのことですが、日本各地の離島には独自の進化を遂げたノコギリクワガタの仲間(別種)が生息しています。離島に生息するノコギリクワガタの仲間については以下の記事で、詳しく解説しているので興味のある方はご覧になってください。
ノコギリクワガタの生息地
北海道から沖縄まで、日本全国にすんでいます。樹液の出る木がある雑木林やブナ林、照葉樹林で見つけられます。
ノコギリクワガタの習性
主に夜行性ですが、昼間に活動していることもあります。夜は、樹液や光によく集まります。昼間は、木の高いところや落ち葉の下などで休んでいます。
成虫の寿命は4ヶ月ほどで、成虫は5〜10月頃に活動します。
ノコギリクワガタ 見分け方のポイント
特徴的な大あごの形で、他の種と見分けやすいクワガタです。小型のオスも、大あごの内側がのこぎりのようにギザギザしていることで見分けられます。
メスは大あごでは見分けにくいですが、体が赤っぽいものが多く、また、メスの体全体には細かい点のような模様があってザラザラしています。
ノコギリクワガタ 採集方法
ノコギリクワガタを採集するおすすめの方法は、樹液採集と木を蹴る方法です。
ノコギリクワガタは、比較的、昼間でも活動するクワガタなので、クヌギなどの広葉樹の樹液に集まるので、そういったポイントを狙っていきましょう。
次に、木を蹴る方法ですが、ノコギリクワガタは臆病なクワガタなので、ちょっとした振動で木から落ちてきます。クヌギの木を見つけたら試しに蹴ってみましょう。
ノコギリクワガタに関する動画
ノコギリクワガタは昼間でも比較的採集しやすい種類のクワガタです。実際にクワガタ採集でノコギリクワガタを捕獲した時の動画がありますのでよかったらご視聴ください。
オオクワガタ
日本に生息しているクワガタの仲間のなかで、最大級の種であるオオクワガタ、体長はオスは21〜77mm、メスは22〜51mmの大型のクワガタです。
横幅のあるガッシリとした体つきが特徴で、日本に生息するクワガタの中でも横幅の太さは圧倒的で、オスの大あごはやや短めですが太く、内側に大きな内歯(大あごの内側にある突起)が1本だけあります。全身が真っ黒で、光沢があります。
ちなみに、この内歯はオオクワガタの大きさによって位置が変わり、大きい個体は上の画像のように大あご先端付近にありますが、小さい個体ほど大あごの真ん中に内歯があり、オオクワガタ採集家たちの中では、内歯の位置ごとに「大歯・中歯」などと呼ばれています。
オオクワガタの生息地
北海道から九州までと、対馬にすんでおり、沖縄にはいません。樹液の出る木がある雑木林やブナ林で見つけられます。クヌギの木を好みます。
性格が臆病なこともあり、普段、見かけることはほとんどなく、大木の高い場所にいたり、深い洞の中に入っていたりと採集する難易度が非常に高く、そのため天然個体は非常に価値が高いです。
オオクワガタ生息場所の特徴
オオクワガタは飛ぶことがあまり得意ではないクワガタで、飛来してきやすい場所にいることが多いです。
一般的にクワガタはクヌギやコナラなどの広葉樹の雑木林に生息していますがオオクワガタの場合、風通しの良いぽつんと立っている樹齢の長い大木にひっそりと生息していることが多いです。
オオクワガタの習性
夜行性で、樹液に集まりますが臆病な性格で、すぐに木のうろ(木に開いた穴)の中に逃げ込んでしまいます。昼間は木のうろにいることが多いようです。
成虫の寿命は3年ほどと、日本のクワガタの中でもっとも長生きです。成虫は5〜10月頃に活動します。性格は比較的おだやかです。
オオクワガタの見分け方のポイント
四角い体つき、真っ黒で光沢がある体、一本だけの内歯などが見分けるポイントです。
小型種やメスはコクワガタやヒラタクワガタと間違えやすいですが、オオクワガタのほうが体の光沢が強く、背中の真ん中あたりに細かい点のような模様が縦にびっしりと並んでいるのが特徴です。
コクワガタ
日本でいちばんよく見られるクワガタです。体長はオスは17〜55mm、メスは21〜34mmの中型のクワガタです。やや細身で、体の色は黒から茶色、赤っぽいものまでさまざまです。
光沢はほとんどなく、「つや消し」の体が特徴です。大型のオスは、長い大あごの真ん中あたりに内歯(大あごの内側にある突起)が1本だけあります。大あごが小さいオスでは、内歯がほとんどなくなっているものもいます。
コクワガタの生息地
コクワガタは昆虫採集でも比較的よく見かける種ですので皆さんご存じかと思います。
コクワガタは北海道から沖縄まで、日本全国にすんでいます。樹液の出る木がある雑木林やブナ林、照葉樹林で見つけられます。
場所によっては公園の木々、木のうろなど狭いところにもよくいます。特にクヌギやコナラの木を好みます。
コクワガタの習性
夜行性で、樹液によく集まります。街灯の灯りなどにも集まります。木のうろ(木に開いた穴)や樹皮のうらなどにもぐりこむのが得意です。
成虫の寿命は1年半〜2年くらいで、成虫で冬をこすことができます。成虫は5〜10月頃に活動します。性格はおとなしめです。
コクワガタの見分け方のポイント
コクワガタは、小さい種であるスジクワガタと間違えてしまう場合もありますが、ほとんど光沢がない、つや消しの体が似ている種と見分けるポイントになります。
ヒラタクワガタ
ヒラタクワガは西日本に多く生息しています。体長はオスは18〜85mm、メスは21〜44mmの大型のクワガタです。全体的に平たい体をしています。西に行くほど大きな個体が多く、九州などでは70mmを超える個体も多く採集されています。
オオクワガタに似たがっしりとした体つきで、体は黒く光沢があります。オスは大あごの根元近くに大きな内歯(大あごの内側にある突起)があり、それより前には小さな内歯がならんで、のこぎりのようにギザギザになっています。
ただし、小型のオスではこのギザギザがほとんどないものもいます。
ちなみに、ここでご紹介しているのは本州・四国・九州に広く生息している、いわゆる本土ヒラタと呼ばれているヒラタクワガタですが、ヒラタクワガタの亜種は鹿児島や沖縄などの離島に数多く生息しています。
ヒラタクワガタは成虫で越冬することができ、寿命は1年から3年と長いです。メスは広葉樹の立枯れや倒木などに産卵し、幼虫は朽木を食べて育ちます。幼虫期間は約1年で、蛹室を作って蛹化し、さらに約1か月で羽化します。羽化後も約1か月は蛹室内で過ごし、その後に活動を開始します。
近年では外国産の亜種や別地域の日本産亜種が自然に放されたり交配したりすることで、日本元来のヒラタクワガタへの遺伝子汚染や生態系への影響が懸念されています 。
ヒラタクワガタの亜種については以下の記事で生息地や特徴について詳しく解説していますので、興味のある方はご覧になってみてください。
ヒラタクワガタの生息地
ヒラタクワガタは日本では本州、四国、九州に広く分布しており、北海道には生息していません。また、日本の離島にも多くの亜種が存在しています。
ヒラタクワガタは低地から山地までの広葉樹や照葉樹の森林に生息しており、湿度の高い環境を好みます。河川周辺や果樹園などで樹液を餌として摂取します。夜行性であり、木の洞や倒木などに隠れて生活しています。気性が荒く闘争心が旺盛であるため、オス同士は縄張りやメスをめぐって激しく争います。
東日本では比較的少なく、西日本では普通に見られます。樹液の出る木がある雑木林や照葉樹林で見つけられます。
ヒラタクワガタの習性
夜行性で、樹液や光によく集まります。昼間は木のうろ(木に開いた穴)などにいます。
成虫の寿命は1年半〜2年くらいで、成虫で冬をこすことができます。成虫は5〜10月頃に活動します。ヒラタクワガタは気性が非常に荒く、交尾させるためにオスとメスを一緒に飼育していると、オスがメスを殺してしまうこともあるほどです。
ヒラタクワガタの見分け方のポイント
大型のオスは大あごの形で見分けることができます。また頭のてっぺんの、左右の大あごの間のあたりに「頭楯(とうじゅん)」とよばれる平たい突起が突き出しているのも特徴です。
コクワガタにもこの頭楯がありますが、ヒラタクワガタは、頭楯の真ん中にV字型の切れ込みがあります。また、オスメスともに、触角の内側に長い毛があるのも、見分けるポイントの一つです。
ヒラタクワガタに関する動画
実際に私がクワガタ採集でヒラタクワガタを採集することが出来た動画を載せておきますので良かったらご視聴ください。
どういう場所にヒラタクワガタが生息しているか、お分かりいただけると思います。
ミヤマクワガタ
「深山」の名前の通り、他の有名なクワガタに比べて人里近くではなく、やや深い森の中にいるため見つけるのが難しい、憧れのクワガタです。体長はオスは29〜79mm、メスは25〜47mmの大型のクワガタです。
大型のオスは大あごが大きく曲がり、鹿の角のような複雑な内歯(大あごの内側にある突起)が4〜5本生えています。小型のオスでも大あごは比較的大きくなって湾曲し、内歯も目立ちます。頭部が四角く、大きくエラを張ったような独特な形をしています。
体は黒っぽい茶色ですが、オスの体には金色の短い産毛のようなものがびっしりと生えています。メスは背中側には産毛がありませんが、おなかに金色の産毛が生えています。
ミヤマクワガタの生息地
北海道から沖縄まで日本全国にすんでいます。
暑さに弱いため、平たん地でほとんど見ることはなく、比較的涼しい高地や山の雑木林やブナ林で見つけられます。
ミヤマクワガタの習性
昼も夜も活動します。寒いところでは昼間に活動し、暖かいところでは夜に活動することが多いようです。樹液や光によく集まります。
成虫の寿命は約2ヶ月と短く、野外で活動した成虫が冬を越えることはありません。成虫は5〜10月頃に活動します。
ミヤマクワガタの見分け方のポイント
大型のオスは非常に特徴的で、エラが張った頭部の形で見分けられます。
金色の産毛もミヤマクワガタにしかない特徴です。また、オスもメスも裏返すとあしにところどころオレンジ色の部分があるのですぐに見分けられます。
アカアシクワガタ
アカアシクワガタはその名前の通り、あしの赤いクワガタです。
赤いのは内側(おなか側)なので、生きているアカアシクワガタを見かけたときは少しわかりにくいかもしれませんが、よく見ると背中側からも、あしのつけ根あたりが赤いことがわかります。
体長はオスは23〜59mm、メスは24〜40mmの中型のクワガタです。
全体的にほっそりした体つきで、オスの大あごは比較的まっすぐで内歯(大あごの内側にある突起)は先の方にだけ1〜3本あります。体は真っ黒で光沢があり、裏返すとあしと、胸のあたりが赤いのが特徴です。
アカアシクワガタの生息地
北海道から九州と、対馬にすんでいます。沖縄にはいません。比較的高地の丘や山のブナ林で多く見られ、涼しい地域では雑木林でも見つけられます。
標高1000mほどの、比較的、標高の高い場所に生息していることが多く、北海道などの気温が低い場所では平坦なにも生息しています。
アカアシクワガタの習性
ヤナギの木の樹液や、光によく集まります。真夏よりも夏の終り頃や秋によく見られ、成虫は6〜10月頃に活動します。
成虫の寿命は半年ほどですが、飼育しているものは冬を越えて1年ほど生きることもあります。
アカアシクワガタの見分け方のポイント
裏返すと、あしや胸などが赤いのですぐに見分けられます。体が全体的に赤っぽいノコギリクワガタと見分けにくいことがありますが、アカアシクワガタはおなかは黒くなります。
スジクワガタ
体長はオスは13〜40mm、メスは14〜24mmの中型のクワガタです。
背中にはっきりとした縦スジがあることが名前の由来ですが、大型のオスにはスジがないこともあります。
大型のオスの大あごは細長くて先端で内側に曲がっており、大あごの真ん中よりやや先の方にある内歯(大あごの内側にある突起)は2本がつながった形をしています。小型のオスの大あごは短く、内歯もほとんどわかりません。
スジクワガタの生息地
北海道から沖縄まで、日本全国にいます。涼しい場所を好み、比較的高地の丘や山のブナ林、雑木林で見つけられます。
スジクワガタの習性
樹液や光によく集まります。ヤナギの細い枝にいることもあります。成虫は5〜10月頃に活動します。
スジクワガタの見分け方のポイント
小型のオスや、メスは背中の細い縦スジで見分けられます。ネブトクワガタも背中に縦スジがありますが、スジクワガタのほうが縦スジが細く、体型もスジクワガタのほうがほっそりとしています。
大型のオスは背中にスジがありませんが、大あごの内歯が真ん中よりも先端寄りにあり、2本がつながった形をしていることで他の種と見分けられます。
ヒメオオクワガタ
体長はオスは22〜58mm、メスは26〜42mmの大型のクワガタです。
オスの大あごの形など、オオクワガタによく似ていますが、オオクワガタよりもほっそりしていて、体の大きさにくらべて足が長いのが特徴です。全身は真っ黒ですが、光沢はオオクワガタにくらべるとやや鈍いです。
オスの内歯(大あごの内側にある突起)は大きいものが1本だけあります。
ヒメオオクワガタの生息地
北海道から九州にすんでいます。沖縄にはいません。主にブナ林で見つけられます。
ヒメオオクワガタの習性
クワガタの仲間ではめずらしく、主に昼に活動します。樹液や光に集まることはあまりなく、地面を歩いていることが多いようです。ヤナギなどの細い枝をかじって、樹液をなめます。
成虫は6〜10月頃に活動します。性格は比較的おだやかです。
ネブトクワガタ
体長はオスは10〜37mm、メスは12〜21mmの中型のクワガタです。
全体的に横幅が太くて足が短く、オスもメスも背中にはっきりとした縦スジがあります。この縦スジは、スジクワガタのものより太いのが特徴です。
また、よく見ると頭のてっぺん(左右の大あごの間)がV字型になっています。
大あごは短めでカーブを描くように内側に曲がっていて、根元の方に大型のオスは2本、小型のオスは1本の大きな内歯(大あごの内側にある突起)があります。
ネブトクワガタの生息地
本州(山形より南)から沖縄にすんでいます。北海道にはいません。雑木林や照葉樹林で見つけられます。
本州から沖縄の広い地域に生息しているものの、局所的に生息していることが多くあまり見ることもなく、採集難易度は高いといえるでしょう。
ネブトクワガタの習性
主に夜行性ですが、昼にも活動します。クヌギなどの樹液に集まりますが、光に集まることは少ないようです。
土の中に潜ることが多いようで、大抵は体に泥がついています。卵も、泥と木のクズが混じったような場所に産みます。成虫は5〜9月頃に活動します。
オニクワガタ
オス、メスともに、大あごに上を向いた内歯(大あごの内側にある突起)があり、それが鬼の角のように見えるので「オニクワガタ」の名前がついています。
のこぎりのようなギザギザの内歯もあり、短めですが特徴的な形の大あごをもっています。体長はオスは14〜28mm、メスは15〜23mmと、名前の印象にくらべて小さなクワガタです。
オニクワガタの生息地
北海道から九州にすんでいます。沖縄にはいません。
北海道では平坦地でも見られるようですが、標高800m以上(2000mくらいまで)の高地に生息しています。
オニクワガタの習性
幼虫は多く見つかるのですが、成虫が活動しているところがあまり発見されておらず、謎の多いクワガタです。
樹液には集まらず、何を食べているのかよくわかっていません。光にはよく集まります。
チビクワガタ
体長はオス、メスともに9〜16mmの小型のクワガタです。
オスでも大あごはあまり大きくならず、一見してクワガタに見えません。背中にははっきりとした縦スジがあり、体は黒く、光沢があってつやつやしています。
一般的にクワガタ採集を行う方は、大型の種を好む傾向にあり、チビクワガタのような小型の種に関しては採集の対象とならないことが多いが、チビクワガタには他の種と異なる面白い一面がある。
他のクワガタが成虫になった後に成虫となるまで過ごした朽木を出て木の樹液を吸うのに対し、チビクワガタは成虫になったあとも朽木に中にとどまり、集団で過ごし、幼虫が朽木を容易に食べることができるように朽木をかみ砕いてあげるといった育児的な行動をとる。
チビクワガタの生息地
本州では神奈川県より西から、四国、九州にすんでいます。林の中の朽ち木にすんでいます。
チビクワガタの習性
成虫になってもずっと朽ち木の中ですごすようです。クワガタとしては非常にめずらしく、他の昆虫の肉を食べる肉食のクワガタです。共食いをすることもあります。完全に肉食というわけではなく、樹液を食べることもあります。
また、先ほどもご説明しましたがチビクワガタは非常にめずらしい、「子育てをする昆虫」です。親が子のそばで生活し、こどもが食べやすいように朽ち木をかみくだいて与えるのです。
マダラクワガタ
日本最小のクワガタで、体長は4〜7mmしかありません。赤茶色の体で、名前の通りまだら模様があります。大あごはオスメスともに小さく、とてもクワガタには見えません。
マダラクワガタの生息地
北海道から九州の比較的、標高の高い地域の主にブナ林の朽ち木の中で見つかります。
マダラクワガタの習性
マダラクワガタは蛹から成虫になった後にも蛹だった場所で越冬し、春ごろから活動し始める。
また、マダラクワガタの食生活については現在も不明な点が多く、水分摂取だけで長期間生きられるのではないかという説もあるのだそうです。
ルリクワガタ
体長9〜14mmと非常に小さなクワガタですが、青や緑のメタリックカラーに輝く、宝石のような美しい種です。オスは青緑色、メスは銅色や黒に近い色が多いようです。
オスの大あごはやや大きくなり、太くて短い大あごが特徴です。
ルリクワガタの生息地
本州〜九州のブナ林にすんでいます。
ルリクワガタの習性
成虫は5〜7月の初夏に活動します。昼から夕方にかけて活動し、ブナの新芽をかじります。
キンオニクワガタ
対馬だけに住むオニクワガタの仲間です。
日本のクワガタの中で唯一、金色の体をしています。金といっても暗い黄土色といったところですが、金属光沢があり、光の加減によってはわりと輝いて見えます。
体長はオスは20〜39mm、メスは20〜24mmの中型のクワガタです
チャイロマルバネクワガタ
名前の通り、明るい茶色の体と丸っこい体つきが特徴のクワガタです。
オスの大あごは短く、メスより少し大きい程度です。体長はオスは18〜37mm、メスは20〜30mmの中型のクワガタで昼間に活動し、よく飛びます。
ちなみにチャイロマルバネクワガタですが、石垣島と西表島だけにすんでいて、石垣島では採集は禁止されています。
オキナワマルバネクワガタ
オキナワマルバネクワガタは黒く光沢のある体と丸っこい体つきが特徴のクワガタです。
体長はオスは42〜70mm、メスは40〜55mmの大型のクワガタです。
沖縄本島だけにすんでいて、採集は禁止されています。あまり飛ばず、よく地上を歩いくことから走ってきた車に引かれてしまうこともあるそうです。
アマミシカクワガタ
アマミシカクワガタは奄美大島と徳之島だけにいるクワガタです。
ちなみに「シカクワガタ」の仲間は日本では一種しかいません。
横から見ると大あごが鎌のように上から下に曲がっていて、「鹿の角のよう」ということでシカクワガタと言われています。
体長はオスは21〜48mm、メスは19〜31mmの中型のクワガタです。
ツヤハダクワガタ
ツヤハダクワガタは横幅が大きく、大型のオスは特に頭部が大きい独特な形をしています。体長はオスが13〜24mm、メスが12〜17mmの小型のクワガタです。
オスの大あごは根元が太く、真ん中あたりで内側に曲がっています。大あごの内側にオレンジ色の毛がびっしりと生えているのが特徴です。この毛が何に使われているのかはわかっていません。
北海道から九州にすんでいて、成虫になっても朽ち木の周囲をで活動しているようです。
マグソクワガタ
マグソクワガタの大あごはほとんど発達しておらず、一見コガネムシにしか見えず、初めて見た人はそれがクワガタであると認識できないかもしれません。
非常に小さいクワガタで、体長はオスは7〜9mm、メスは8〜10mmで、メスの方がわずかに大きいのが特徴です。
茶色っぽい体に金色の毛がまばらに生えています。マグソとは「馬の糞」という意味ですが、動物の糞を食べるわけではなく、見た目から名づけられたようです。
ちなみにマグソクワガタは北海道から本州の岡山県より東にすんでいます。
ルイスツノヒョウタンクワガタ
ルイスツノヒョウタンクワガタは和歌山や九州の一部、対馬や南西諸島にすむ体長12〜19mmの小さなクワガタです。
いくつもの突起が複雑に枝分かれした独特な大あごが特徴です。
前だけでなく上に向かう突起が突き出していて、鬼のように見えます。メスも同様の大あごをもちます。習性はチビクワガタに似ていて、肉食で、子育てをします。
マメクワガタ
マメクワガタはチビクワガタによく似ていますが、大あごはチビクワガタより小さく、細身の体をしています。
体長は8〜12mmの非常に小さいクワガタです。チビクワガタと同様に肉食で、子育てもします。
コルリクワガタ
コルリクワガタですが、前述したルリクワガタによく似ていますがさらに小さく、体長はオスは7〜14mm、メスは7〜12mmです。
最近になってすんでる場所によってちがう種であることがわかり、「コルリクワガタ」「トウカイコルリクワガタ」「ユキグニコルリクワガタ」「ニシコルリクワガタ」の4種に分けられましたが、見分けるのはほぼ不可能ほどよく似ています。
ホソツヤルリクワガタ
ルリクワガタによく似ていますが、名前の通り細身の体つきで、光沢が強いのが特徴です。本州の限られた地域にすんでいます。
ニセコルリクワガタ
ニセコルリクワガタは、ルリクワガタやコルリクワガタにそっくりで、見分けるのは困難です。
暖かい場所を好み、四国と九州、本州では和歌山県の紀伊半島だけにすんでいます。
最近になってすんでいる場所によって「ニセコルリクワガタ」「キイニセコルリクワガタ」「キュウシュウニセコルリクワガタ」の3種に分けられました。
タカネルリクワガタ
四国の石鎚山やその周辺の標高1600m以上のところにだけすむ、めずらしいクワガタです。見た目はルリクワガタにそっくりです。
2007年6月に神奈川県の昆虫研究家によって発見されました。
ヤマトサビクワガタ
ヤマトサビクワガタは体に短い毛がびっしりと生えており、ほとんどの場合、そこに土や木くずがついています。
オスの大あごはあまり大きくなりません。体長はオスは14〜27mm、メスは17〜23mm、徳之島と九州のごく一部にだけすんでいます。
スジブトヒラタクワガタ
スジブトヒラタクワガタは奄美大島の周辺のいくつかの島だけにすむヒラタクワガタの仲間です。
体長はオスは23〜71mm、メスは26〜42mmの大型のクワガタです。体つきや大あごはヒラタクワガタに似ていますが、背中に縦スジがあります。
リュウキュウノコギリクワガタ
リュウキュウノコギリクワガタは奄美大島や沖縄などの南西諸島にすむノコギリクワガタの仲間です。
体長はオスは22〜80mm、メスは19〜41mmの大型のクワガタです。体つきはノコギリクワガタらしく、体の色はすんでいる島によって大きく違い、黒っぽいものから、明るい茶色のものまでいます。
タカサゴノコギリクワガタ
タカサゴノコギリクワガタは台湾と石垣島、西表島にすむノコギリクワガタの仲間です。
体長はオスは22〜64mm、メスは19〜36mmの大型のクワガタです。体の色は、黒に近い茶色です。石垣島、西表島にすむものは「ヤエヤマノコギリクワガタ」として別の種だと考えることもあります。
アマミミヤマクワガタ
アマミミヤマクワガタは奄美大島だけにすむミヤマクワガタの仲間です。
体長はオスは23〜51mm、メスは25〜33mmの中型のクワガタです。ミヤマクワガタほど、エラは発達しません。木や電信柱の高いところにとまる習性があるようです。
アマミマルバネクワガタ
アマミマルバネクワガタはオキナワマルバネクワガタとよく似た種で、奄美大島と徳之島にすんでいます。
ヤエヤママルバネクワガタ
ヤエヤママルバネクワガタはオキナワマルバネクワガタとよく似た種で、石垣島、西表島、与那国島にすんでいます。
チョウセンヒラタクワガタ
チョウセンヒラタクワガタは日本では対馬だけにすむヒラタクワガタの仲間です。
体長はオスは23〜54mm、メスは20〜30mmの中型のクワガタです。
ミクラミヤマクワガタ
ミクラミヤマクワガタは伊豆諸島の御蔵島と神津島だけにすむクワガタです。
日本のミヤマクワガタにはあまり似ておらず、中国のパリーミヤマクワガタに近い種だと言われています。体長はオスは21〜35mm、メスは22〜27mmと、ミヤマクワガタよりずっと小さいです。
オガサワラチビクワガタ
オガサワラチビクワガタは小笠原諸島だけにすむチビクワガタの仲間です。チビクワガタとよく似ていますが大きく、体長16〜21mmほどです。
フィッシコリスマメクワガタ
フィッシコリスマメクワガタは日本では入島禁止の硫黄島だけにすむ、幻のクワガタです。
体長は7〜12mmで、マメクワガタとよく似ています。
まとめ
日本で知られているクワガタムシ全種を解説しましたが、いかがでしょうか。
日本には想像よりずっと色々なクワガタがいることを知って驚いたのではないでしょうか。
一般的に、森の中で普通に出会うクワガタは、
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くらいでしょうか。
それぞれ特徴があり、迫力もあるかっこいいクワガタですので、見分けられると楽しいと思います。ぜひ、この記事の解説を参考にして、見分けてみてくださいね。
最後に、現代ではペットショップやネットショッピングなどによって簡単にクワガタを購入することができるようになっています。場合によっては、日本にはすんでいない外国のかっこいいクワガタを飼うことさえできます。
こうした「本来その地域にいないクワガタ」を放してしまうと、もともとその場所にいた生物と争い、結果的に元いた生物が追い出されたり、絶滅してしまうこともありえます。
購入したり、捕まえたクワガタを飼うときには、最後まで大切に育て、決して生きているクワガタを外に逃がさないようにしてくださいね。
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